2005年08月23日

Google Maps と iTunes Music Store の波

ちょっと前だが、こんなブログのエントリーがあった。「Google の Google Maps / Earth のやり方はGIS業界に受け入れられるのか?」という内容だ。

edparsons.com : Google Geography Apps - Do they justify the hype ?
(via Google Maps Mania

よく知らないのだが、この記事を書いている Ed Persons という人は、イギリスの Ordnance Survey という会社のCTO(最高技術責任者)なのだが、この会社は元々日本の国土地理院に当たる政府機関で、現在は会社組織(公社?)を取っているらしい。3年ほど前に日本でGIS関連のセミナーで講演している資料があった

記事の元々のきっかけは「Google Maps/Earth はGIS業界の救世主か敵か? 衛星写真は古くて品質が悪いし、空間情報を分析できる開発なんて誰もして無いじゃないか」、というコメントをもらったことだ。で、言っていることを要約すると、
●Google が既存のGIS(業界)をどうにかしようとしてるわけではなく、マスマーケットに向けてウェブ開発者が地理情報を利用したアプリケーションを作れるようにしたかっただけ。しかし、ESRI のようなGIS専門会社が数年にわたってやりたかったことを短期間で実現してしまったのは事実
●空間情報分析などはマーケットとして小さいから、直近ではサポートしないだろう
●Google Maps API を作って開発者とユーザに無料開放し、大衆化させたことの意義は非常に大きい

で、自分自身は別に GIS やその業界に詳しいわけでも深く関わったことがあるわけでもなく、ただ物事を地図を通して見たり、地図を手元において見たりするのが好きなだけだ。が、とにかく Google Maps/Earth とその応用性にまずぶっ飛び、飛びついた。API が公開されて誰でもカスタムマップを作れ、自分のウェブサイトでのサービスに使える意義の大きさに驚き、こうしたブログ開設に至ったというわけだ。

で、その消費者の立場から業界を客観視すれば、これまで高額なライセンス料で売ってきた地図がある意味無料開放されたわけだから、否定的な見方をする人もいるのだろう。Google Maps に地図データを供給しているゼンリンは、

Google Maps APIを使った地図サービスが次々登場 - CNET Japan
 ゼンリンでは「今後ビジネスモデルが変化していく可能性はあります」としながらも、「重要なのはユーザーのニーズに合わせ、地図にどんな付加価値を乗せてサービスするかという点だと思います。Google Maps APIではたしかに使いやすいエディターが提供されていると思いますが、Googleマップはピンポイントで場所を特定するような使い方には不向きだと考えます。そのため、無償だからといってすべてGoogle Maps APIを利用した地図サービスばかりになることはないでしょう。自分で首を絞めてはいません」と見ている。
後半は言ってることがよくわからない部分もあるが、とにかく Google Maps/Earth の登場によって、より地図の機能・専門性や付加価値、サービスの利便性に焦点が移ったことは確かだろう。まだまだデータソースや業界構造的にいろいろ問題はあるのだろうが、消費者の立場からはいい傾向だと言える。いまベストセラーになってるという震災時帰宅支援マップなどに典型的な姿を見ることができる。

一方、アップルが音楽業界に送り込んだ iPodiTunes Music Store(以下 iTMS)もある意味似たような効果があったと思う。何が一番大きいと言って、やっぱり音楽をもっと聴くようになったこと。(多分すごくたくさんいると思うが)自分のようなライトな音楽ファンにとっては、これまで棚に塩漬けになっていた CD が iPod で手軽に聴けるというのはとても大きいし、しばらく聴かなかった曲をシャッフルで再発見したりする楽しみが増えた。iPod が聴き方を変えたなら iTMS は買い方を変えた。好きな曲を試聴して買ったら即 iTunes/iPod のライブラリに加えて楽しめる。自分はアルバムまとめて聴く派なので今のところ試聴しか使わないし(笑)、150円という値付けはまだちょっと抵抗あるのだが、日本でもすでに多くの音楽ファンに受け入れられているのは明らかだ。

で、日本でなかなか iTMS が始まらなかった理由は、ご存知のようにレコード会社が流通も取り仕切っている点と、アップルのユーザにとって有利な DRM(デジタル著作権管理)がコピーコントロールを推進してきたレコード会社の考えと合わなかったことがあげられている。要するにここでも消費者の利便性や利益により近い形のシステムが市場に受け入れられたという現象が起こっているわけで、Google Maps/Earth の場合と二重写しになる。

地図の供給元も音楽の供給元もその権利は主張して当然だとはもちろん思うし(私的録音補償金制度の二重取りについては論外だと思っているが)、専門家として地図や音楽の質そのものをより高めるのに努力されるのは当然と思う。しかし、それに固執するあまり消費者の利益や利便性が損なわれてはならないのは当然だし、それに対応しなければ競争には勝てないだろう。Google Maps や iTMS は情報をユーザに提供するプレゼンテーションの部分や流通の部分をいじっているわけだが、それだけで業界全体がここまで引っ張られ、ゲームのルール自体が知らん間に国外から書き換えられているような状況をもたらしている。ブランドという意味でも、何も知らないごく普通のユーザには Google が地図を提供していたり、アップルが音楽を提供していたりするように見えてしまう確率がどんどん高くなってることは否めない。

Google や Apple と一蓮托生状態になることは避けたいし、消費者に選択をさせない寡占状態を作らせてはいけないと思っている。負けないように日本発のサービスも育ててほしい。まごまごしてると近場の韓国にさえやられてしまいかねないし。
posted by nagoyan at 12:07| Comment(2) | TrackBack(0) | Google Maps | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 自分で首を絞めてはいません」と見ている。

と言いますか、又聞きの又聞きくらいなので真偽は知りませんが、
私の聞いた話では、ゼンリンと話がまとまった段階では、APIを開放される事など、ゼンリンとしては「聞いてないよ」という状況だったらしいです。
ですから、ページ規模の差があるから同額とはいかないとしても、「はてなマップ」とかのサービスが個別にゼンリンに地図使用を申し込んだ際に要求される金額と同レベルでの金額しか支払われていないという話を聞きました。
真偽は判らないですし、事実だったとしてもさすがにその後改善されているかもしれませんが。

Googleが再販利用も考慮した形のライセンスを支払って、その上でそれを採算度外視で無料開放して、旧来型のビジネスをやる企業と今ドキのHACKERとの橋渡しをしてくれる、というのならば「神!」なんですけども。
もしそういった形で、正当な金額を支払っていないで、なし崩しに自分だけ賞賛される構図だけ作ってよしとしているならば、あまり手放しにはほめられないですね。
Posted by まっぷたん萌え at 2005年08月23日 15:04
まっぷたん萌えさん、コメントありがとうございます。

まあ少なくともゼンリンと折り合った契約内容に API 開放による Mashup の派生が違反してないことは確かですね。つまり「Google のドメイン以外に表示してはダメ」のような条項がないということですし、厳密に言えば地図自体は Google のサイトから表示してるわけですし・・・
さらに言えば、このことによって Google は直接の販売収入を得てないわけですから「再販」にはならないんでしょう(もちろんアクセスアップによる広告手数料など間接収入はあるわけですが)。

ゼンリンにしても、もし契約見直しを迫るにしても、Google が乗り換られる競合相手はいくらでもいるわけですし(世界測地系への対応がトリガーになるかもしれません)、とりあえず様子見してるのかもしれません。

いずれにしても、ゼンリンも主たる収益源に影響出てきたら何かアクションがあるかもしれませんが、今は API の開放によるウェブリミックスがどういう市場の変化をもたらすか見定めている時期でしょう。

最悪のシナリオは契約見直しで他の会社も含めて利用料金が高止まって、本リリースで Key の取得が有料化することですかね。それはだけ避けてほしいなあ・・・
今でも1日5万ヒットというハードルはあるわけですし、実際、これを超えて Google と何らかの有料契約みたいなことになった会社ってあるんでしょうかね・・・あるとしたらはてなマップくらいかな。でもそれこそ「再販」になるんでしょうね。
Posted by nagoyan at 2005年08月23日 22:38
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