1984年のヴィム・ヴェンダースの映画、"PARIS, TEXAS
女を愛するあまり、愛は壊れてしまう。それは愛する人への本当の愛ではなかったのだ。男は放浪を始める。言葉も、睡眠も失う。
4年後、弟に発見された彼は、引き取られていた息子と再会し、だんだんと心を通わし始める。そして、失踪した母親を一緒に探しにヒューストンへ旅立つ。
そして、マジックミラーで仕切られたのぞき部屋のシーン。男は愛する女に語りかける。男はすべてを語った。それが「彼」だと気がついた女は、何とか彼を見ようとする。女の顔に重なって映りこむ男の顔。
男は「本当の愛」を理解した。女に、息子のいるメリディアン・ホテルの部屋番号を教え、去っていく。息子は母親の胸に抱かれた。でも男はひとり、荒野のかなたに去っていく。
彼は、何故去ってしまったのか。
愛するがあまり、再び女を傷つけてしまうことを悟っているのか。
3人が再び会うことはあるのだろうか。
永遠のテーマだ。
この映画で好きなシーンは、なかなか心を開かない息子を学校に迎えに行き、二人で道の両サイドの歩道に分かれて歩いていくシーン。しばらく歩いて、上り坂で立ち止まった男は、息子に歩み寄っていく。
このシーン、思い出しただけで涙が出そう。
"Paris, Texas" という町は実在する。ダラスのそばの、わりと大きな町のようだ。でも、周りは荒野。男の父親と母親が初めて出会って愛し合った場所だ。男はそこの荒野に土地を買い、愛する女と息子と一緒に戻りたいと思っていた。
そんな日々はやってくるのだろうか。
息子は、母親のいる町がヒューストンだと知り、「宇宙センターのある街だね」という。NASA のジャンパーを着てヒュートンの町に向かう途中、トラックの荷台からウォーキートーキーで、運転している父親である男に無邪気に語りかける。
「ある男が赤ん坊を置いて光速で旅に出た。1時間で戻ってきたけど、光速だから赤ん坊は老人になってた」そんな時代は来るのかなあ、野口さん。
これからも自分が感銘を受けた映画ゆかりの地を巡ってみようと思います。
私もこの映画、年に1、2度くらい見直しては涙してしまいます。
彼はなぜ去っていってしまったのだろう・・・
その答えをヴェンダースは「ベルリン・天使の詩」で出したのかもしれないけど、自分には直接の答えだとは受け取れませんでしたね・・・
また半年後ぐらいに "PARIS, TEXAS" を見ようと思ってます。