Google Earth のルートマップを作っているときからとにかく気になっていたのがコースのトリッキーさ。とにかくうねうねと蛇行するコース。ヘアピンになっているところも何カ所かある。思い切りスピード出せそうなまともな直線は最後の計時ポイントの 49.7km 地点に向かうところくらい。パワーもだがテクニックもかなり要求されるコースだ。
先にスタートしたエヴァンス、ヴィノクロフがなかなかいいタイムをたたき出す中、ラストの4人がウルリッヒ、ラスムッセン、バッソ、アームストロングの順でスタートする。
いきなり最初のロータリーでラスムッセンが滑って落車。タイムトライアルでの不利を言われながら、総合順位を守る立場で重圧の中で走り始めた彼にとって、いきなりの落車で多中はどうだったのだろう・・・そしてこれが悲劇の始まりだった。
ウルリッヒが最初の 17km の計時でトップのタイムで通過し、ラスムッセンとの総合でのタイム差をどんどん詰めていく。落車の影響もあってか、ぜんぜんピッチの上がらないラスムッセンをあっさり逆転してしまった。
そして総合2位のバッソも最初から猛アタック。 顔を紅潮させてすごい走りを見せる。
そのバッソが鋭いカーブを曲がって丘を登って行くと車が止まっている・・・なんと、ラスムッセンがホイール交換している! その横をさっとバッソが抜いて行く・・・そして換えたホイールも不調でまた交換、そして仕方なく自転車ごと交換、それもダメ・・・3台目の自転車に乗り換え、現実を認めたくないように寂しそうに走り出す・・・そしてまた手を上げて自転車交換・・・
Jスポ解説のメカニックの永川さんが「これは見たくなかった・・・」と、ラスムッセンのメカニックの心境になって頭を抱えて言葉に詰まってしまった。1秒を争うタイムトライアルで、何とも惨い光景だ。やっぱり、Saint-Etienne に魔物はいた!
バッソは17km でランスも7秒差で押さえるすごい走りでトップに躍り出て、この先どうなるか、とわくわくさせてくれる。
しかしランスは高速回転炸裂で快調な走り。一人だけディスクホイールを使わずに走る。Jスポ解説によると、ランスはこのコースを3回ほど試走しているそうで、テクニカルなコースで空力より重量の軽い方を選んだということか。
そのテクニカルなカーブを攻めきれずに、焦るラスムッセンが測道の草むらにサマーソルトで突っ込んで大転倒。そのあとの鋭いカーブも曲がりきれない。山岳賞は狙っていたが、図らずも初めての総合争いに加わってしまったラスムッセンは完全にパニックに陥ってしまった。見ていた自分も、もう言葉にならない、いたたまれない感情に苛まれてしまった。
40.2km 地点の3級の峠、Col de la Gachet の前の 35km の時点で、バッソが前半のオーバーペースがたたったのかタレてしまい、吠えながら走るウルリッヒがトップに躍り出た。
おお、ウルリッヒ来たか、と思ったのもつかの間、激走するランスがさらにその上を行き、ウルリッヒに19秒差を付けてついにトップに!
もうぐうの音も出ないこの王者の貫禄! すごすぎる・・・
その王者が、6分も前にスタートした痛々しいラスムッセンを容赦なくダンシングしながらブチ抜いて行く。脚の回転が違いすぎる! 最後尾に沈み、総合でも表彰台を守るどころか、5位、6位・・と沈んで行くラスムッセン・・・
Col de la Gachet の峠でもウルリッヒに32秒差を付け、そこからの下りでも別世界の速さを見せつけるランス。総合順位を守るコンサバティブな走りはみじんも見受けられない。もしかするとステージ優勝なしで7連覇達成か、と思われていたが、人生最後のタイムトライアルで、集中しながら、派手なガッツポーズを見せることも無く、王者のゴールでステージ優勝を決めた。
なんという大人な勝ち方だろう。
それにしても、見応えのある、明暗のはっきり分かれたタイムトライアルだった。もうおなかいっぱい。
Stage 7 Result (cyclingnews.com)
各計時ポイントでのタイム(letour.fr)
これで、ランスの7連覇での引退は完全に確定的。バッソもウルリッヒもヴィノクロフも、結局、ランスにひと太刀も浴びせること無く敗れ去って行った。
バッソは後半脚がなく、結局このステージ5位に終わった。ウルリッヒはこれで念願の(?)総合3位に。バッソには1分41秒差で、2位まではちょっと無理な状況。
ラスムッセンはヴィノクロフにも抜かれて総合で7位に撃沈。走っている最中も目が泳いでいたが、この最悪のレースのあとで山岳賞で表彰台に立たなければならないこの辛さ。厳しい目で空中の一点を見つめていた。でも山岳賞自体すごいことなんだからさ・・・
ヴィノクロフは移籍を有利な条件に運ぶ走りだった。
3人の子供にじゃれつかれながらの、ランスの余裕のインタビュー。
Armstrong wins his first stage this year (ESPN/AP)
"Quite honestly, I wasn't absolutely sure I could do it," Armstrong said. "I thought Jan would be strong, and then when I got to the first check I saw that Ivan was seven seconds up and I thought 'Oh boy, this could be an interesting day."'最初から勝利を確信してたはずだと思うが、余裕の控えめコメントだ。圧倒的王者のままでの引退するくらい、スポーツマンとして気分のいいことは無いだろう。気分が良すぎて、マイヨジョーヌの表彰でもらったひまわりの花束とライオンのぬいぐるみを子供にあげてしまった。しかし、そのあとの記者会見では、ほっと肩の荷を降ろした感じで、これまでの7年間を振り返っていたようだ。
"I ended up turning things around and winning," he said. "So, pleasant surprise."
"It's nice to finish your career on a high note," said Armstrong. "As a sportsman, I wanted to go out on top."
しかし、シェリル・クロウはずーっと帯同しているけど、もしかして真の目的は3人の子供と仲良くなるためか(笑)・・・しかしランスのお母さんは若いな・・・17歳のときにランスを産んだからまだ50歳かい。
明日の最終ステージはシャンゼリゼ。慣例により総合争いは無いけど、3つのスプリントポイントでマイヨベール争いはまだ残っている。点数配分はどんなだったかな? 後方は、またシャンパンを飲みながらのプロトンになるだろう。
長かったツールも、ついに明日で終わり。ランスも明日で終わりだし、なんか寂しい・・・自分もシャンパンでも買ってきて、飲みながら観戦しようか。
今日は完全に「ランスの日」だった。明日は「ランスのための日」になるだろう。
シャンゼリゼの「ランスの花道」はどんな色だろう。
本当にランスは強い!ですね!
昨日の夜は、スカパーのディスカバリーチャンネルでやっていた、
「サイエンス・オブ・ランス・アームストロング」
を見てから、ツール・ド・フランスの試合を見たのですが、もう本当に感動しました。
ラスムッセンは痛々しかったですね・・・
。
メカニックさん達の努力も必要ですが、選手本人の精神力というのもこれからの課題になりますよね。
来年以降、頑張ってほしいものです。
今日の夜、きっと私泣いちゃいます。
ランスにお疲れ様と言いたいですね。
お互い、最後の夜を楽しみましょう!!
こっちのブログでのお返事にも書きましたが、Google Earthでコースを見るとは!
一本取られました。もうちょっと早く教えて欲しかったですよ!
今日のパリは涼しくて、あんまり天気もよくありません。雨の中でシャンゼリゼの周回コースは危ないので、晴れて欲しいですね。
そろそろ最終ステージスタートの時間が近づいてきましたね・・・シャンパンとつまみの準備も完了です。最後のステージを楽しみましょう (^_^)
> inarkiさん、
自分も一度でいいからツールのコースをフランスの田舎の美しさを楽しみながら走ってみたいものです。しかし、ラスムッセンには、紅蓮の炎に包まれたイバラの道に見えたでしょうね・・・ランスもちょうどダンシングするところでラスムッセンを抜いて行って余計悲惨な光景に見えてしまいました。
>しょーじさん、
Google Earth は今回のツールの直前にリリースされて、向こうのBBSで「ルートマップあったらいいね」なんて話になって、そっから一気に盛り上がりました。特に山岳ステージはド迫力でコースの下見が出来ました。来年はぜひ主催者にルートマップを作って配布して欲しいところです。
パリ、雨降ってるみたいですね・・晴れて欲しいなあ!
しかし圧倒的な強さで勝って引退なんてカッコ良すぎる・・・